サンリオピューロランド  sanrio puroland  東京都多摩市

●亜門めざして

  27歳の男がひとり有給を取って平日の昼間から訪れるべき場所、それがサンリオピューロランド。私はすでに男４人で来訪という荒行を達成しているが、今回は新しく別の目的ができたのだ。
  『１「ワン」 キティのドリームレビュー』。実際、施設内の同じ劇場で前回鑑賞した『ビバ！エステdeピューロ』もおもしろかったのだが、単なる新作というだけではわざわざもう一度行こうという気にはなれない。が、今回の作品は宮本亜門の演出なのだ。といっても、私は別に演劇や舞台に興味があるわけではない。だが亜門演出。この事実が私を再びピューロへといざなったのだ。心のメカニズムは自分でもわからない。(以下、『ワン』についてのネタばれも含まれるので、「それは困る」という方はご注意下さい。)

●春休みをなめるなよ(写真ブれててすいません)

  入り口にも掲示されていたのだが、平日にも関らず人がごった返していた。ちょうど学校が春休みに入った頃といった要素もあって、特に混雑していたと思うが、それを差し引いてもサンリオ人気のすごさをまざまざと見せつけられた。もともとそれほど広いスペースでないこともあり、人口密度という点ではディズニーランド以上なのかもしれない。
  客層としてはカップルはちらほら見られる程度で、ヤングファミリーがメイン。連れている子供は就学前が多く目に付く。お父さんはきっと有給を取っているのだと思うが、それは自分一人で見に来た私が取った有給とは意味が違うのだろう。

●亜門に誘われて

  さて私も『ワン』待ちの列に加わること小１時間、やっとのことで開演だ。
  写真はキティのボーイフレンドのダニエル。彼らはイギリス生まれなので、舞台もイギリス。そう言われてみればそれっぽい雰囲気も感じられなくはないかもしれない、といった具合だろうか。頭頂部の毛がキティとの差異。
  後ろにいるおねえさんたちは短いスカートをはいているが、結構はげしく踊るので、どうしてもパンツ見えがち。多分見せることを前提にしているのだろうと思われるのは、人それぞれパンツの色が違うからだ。全員不自然な光沢のあるタイプ。

●亜門に囲まれて

  ダニエルがお父さんの仕事の都合でアフリカに行ってしまうことを知り、落ち込むキティ。写真はそんなキティをいろいろな人が励ますシーン。そりゃ頭に白鳥やらエッフェル塔やらをつけた人に囲まれて励まされるなら、ブルーな気持ちも元気になるだろう。例えその元気がやけくそに近いものであっても、とにかく私も一度、頭に白鳥をつけた人に励ましてもらいたい。
  白鳥の人は、「夢をあきらめちゃいけないよっ！」とか言っていたと思う。頭に白鳥、さらに股間に白鳥だったらもっと元気に、もっとやけくそになれそうだ。

●亜門に魅せられて

  もうストーリー的にはどういうつながりがあるのか忘れてしまったが、とにかくキティとダニエルがタップダンスを披露するシーン。ちなみにダニエルはニューヨークで暮らしていたことがあり、ダンスが得意というキャラクター設定。現実世界で私の周りにいたら、一発殴ってしまっているかもしれない。
  着ぐるみでタップ。これまでの着ぐるみ観にはなかった視点ではないだろうか。見た目のほんわかした感じとは裏腹に、相当に高い体力とダンススキルを要求されるだろうと思う。かわいい顔して、中身はかなり汗くさいと推察される。はやくポカリ飲まないと。

●亜門につつまれて

  どうしてキティが浮いているのかは忘れてしまった。必ずしも写真は劇の進行順ではないような気もしてくる。覚えているのは、キティを勇気づけるために、劇中で観客も言わされる「ドリームドリーム 叶えー」というおまじない。お読みの方も一度口に出してみてほしい。叶えー、という命令形はむしろなげやり。
  劇の最後では、キティの「みんなもどんどん夢を持って、じゃんじゃん夢を叶えてね！」というセリフも聞かれた。これはインパクトが強かったのでキティが言ったままに覚えている。じゃんじゃん叶う夢。叶いまくる夢。それでいいのか。

●亜門ひとやすみ

  園内のトイレ。個室の１つでくまがふんばっている。写真は最高にふんばっている瞬間を狙って撮ったが、ずっとこのポーズというわけではなく、顔をあげてうなったりもするので、リアルに力む姿を楽しめる。そういえば、人の脱糞する姿を見ることなどは普通の生活の中ではないことなので、貴重な機会を提供してくれているのかもしれない。
  脱糞鑑賞後、私も別の個室に入り脱糞したのだが、ドアを閉めてもくまが力む声が聞こえてくる。「おー」とか「うー」とか、何パターンかのうなりが聞こえてくる中での脱糞には自然と力が入る。さすがに声は出さないが、作品では負けたくない。

●さらば亜門

  サンリオのホームページには『ワン』のことを「大人のための本物のレビューショー」と書いてあるのだが、どのあたりが大人向けだったのかはいまひとつよくわからない。まさかパンチラのことを言っているわけではないと思う。
  入場時に買ったパスポートは、全てのアトラクションを自由に楽しめるチケットだったのだが、『ワン』を見終わった私はさっさと園を後にしてしまった。外はまだまだ明るい。これから入場しようとする人もいる。僕は何をしに来たのだろう。
  目的の１つは、この打ちのめされた感じを味わうためだったと思う。(00/04/07)