多摩川団地周辺

　

多摩川団地周辺 around tamagawa danchi 東京都調布市

●うずまく何か

その名の通り、多摩川にほど近く位置する団地群。川べりの団地というと情緒あふれる印象がある気もするが、撮影した日はどんよりとした曇り空で、団地特有の四角感も不安を加速させる趣きになっている。都会の団地は触ると血が吹き出しそうなエッジを持っている場合もあるが、そういう意味ではこの団地は薄暗い方への親近感があるとも言える。
左に見える背の高い建物は給水塔であるらしく、団地内にいくつか点在している。美しくもあるそのフォルムだが、その感覚の由来はやはり中心付近のくびれにあるのだろう。しがみついたり登ったりしたくなる衝動をおさえ、レポートしよう。

　

多摩川団地にてヘッドレスタイプ

参考：静岡県沼津市にて撮影

●ヘッドレスふたたび

写真右にあるようなタコのすべり台は全国各地で確認され、すでにこのサイトでも何度か紹介している。さらにそのヘッドレスタイプが存在することも、アイテム集その８でレポートした通りだ。そういう意味でこの多摩川団地で見られた頭がないタコは新鮮味こそ少ないが、それが複数存在するという意味ではなにか異常なものを感じさせられる。なぜ頭がないのかは不明だが、造形を調べてみたところ住民たちのバイオレンスによる破壊ということではなさそうだ。
写真左と写真中は別のタコで、よく見ると形状に違いがあることもわかる。タコのすべり台を見たことがない人がこのヘッドレスに出会ったならば、きっとタコだと気づかずに不気味な形のすべり台だなということで終わってしまうのだろう。正体不明の物体がすぐそこにある暮らしというのはつらそうだ。

●イリュージョン系しいたけ

きのこを模したテーブルといすのセットは見かけたことがあるが、ここまで密集しているのは明らかに異常だ。いろいろな色がついているのはカラフルというよりはむしろやけくそ気味。きのこというモチーフとあいまって、写真を見ているだけでも毒電波におかされそうな雰囲気だ。
上面がフラットになっているのを抜きにして考えると、モチーフはしめじやまつたけではなくしいたけだろうか。しいたけのやるせないたたずまいに一石投じようとする試みはいいのだが、結果としては失敗している。

　

●丸さについて
ほぼ同じように配列されているライド群２景。中央に置かれている丸っこいライドはてんとう虫で、これも上下共通。
写真上、くわがたむしやかえる、白鳥といったライドがてんとう虫ライドについて語らっているという構図。てんとう虫の丸さ、ひいてはてんとう虫の模様の丸さについて、ライドなりの考察が交わされているのだろう。本体が丸、模様も丸という点で、てんとう虫の丸さは拍車がかかっている。
このようなサークル状に配置されたライドの場合、人が搭乗すると期せずして向き合う形になってしまい、語らいを強制される格好になってしまう場合も多い。が、この例の場合は配置されている円が大きいため、他の搭乗者と適度な距離を保つことができるのもよい。
そういう意味で配置と矛盾しているのが写真下の例。同一円周上というしがらみを残しつつも個々のライドは外を向いており、搭乗者各々がプライベートな愉しみに浸ることができる仕様になっている。
てんとう虫の丸さに背をむけることになっているのは解せないが、丸さを背にして丸さを思うという丸さ上級者向けの試みと好意的に解釈してみたい。丸さ無きところに丸さを見る。丸さは心の中にある。

●なにかのはけ口

上のサークルにも見えたくわがたライドは他にも散見され、写真は特徴であるはさみが破損している例。ぼきりと折れたはさみが、だらりと下向きに垂れているのが生々しい。一見穏やかに見える団地の風景にも、こうした形でバイオレンスの影が垣間見える。突起と見るや手を出さずにはいられない若者のえじきとなってしまったのだろう。確かに人は大人になる過程で、突起に冷静に向き合えない時期がある。
それとは別に、ライドに鉄骨が入っているというのは新たな発見。

　

●爽やかなよどみ

私も団地に住んでいたことがあるが、当然ながらこんな給水塔や頭のないタコがある団地ではなかった。どこの団地も特徴的な要素はあるものだが、多摩川団地は特徴だらけでどれが特徴なのだかよくわからないという域にまで達している。
こうして見ると改めてタコの白さが際立っているのだが、このすべり台がやはりタコに見えないのはその色にも原因があるだろう。一体タコは何に擬態しようとしたのだろうか。(01/07/24)

　


多摩川団地にてヘッドレスタイプ		参考：静岡県沼津市にて撮影